//TDCソフトASEAN進出の可能性を探る

TDCソフトASEAN進出の可能性を探る

1月、TDCソフト株式会社の視察団がカンボジアを訪れた。

同社はカンボジアの他にもシンガポール、インドネシア、ラオスにも視察団を派遣しており、ASEANへの進出の可能性を探っている。

TDCソフトは、東京都千代田区に本社を置くSIerで、東証プライム市場に上場しており、創業60年以上の古参のIT企業である。

事業内容はITコンサルティング、金融ITソリューション、プラットフォームソリューションなど多数の事業を抱えており、保険、クレジット、銀行などの金融業界からエネルギー、製造・流通、公共まで幅広い分野で数多くの実績を持つ。

しかし、そんな日本の大手IT企業のTDCソフトだが、意外にも海外拠点はない。

ではなぜ今海外それもASEANに注目しているのだろうか。

今回の視察のカンボジア担当チームのリーダーである手川裕史マネージドサービス部長によると「4月からの中期経営計画に組み込める要素を探ることが目的です。今回の視察先の4カ国に関してはASEANの中で発展著しい国から、これから発展するであろう国までバランスよく選定されています。IT化の進み具合や取引先や取引銀行の進出の有無、さらには将来性を見通すならばITインフラが整いつつある、もしくはこれから整いそうな国などの条件を勘案して決まりました。」と語ってくれた。

同社は前回の2022年4月から2025年3月までの中期経営計画にて“市場や社会の潜在ニーズを捉えた付加価値の高いITサービスを提供することを基本コンセプトに掲げ、「高付加価値SIサービスの追求」、「SIモデル変革の推進」、「事業領域の拡大」の三つの基本戦略を中心とした事業活動を推進する”としており、そしてその計画は2024年に上方修正されたことからも大成功と言えるだろう。そして好調な今だからこそ新たな戦略を模索するという経営陣の攻めの姿勢を垣間見ることができる。

こうした背景には、昨今の円安、それに伴う物価高騰などの依然として先行き不透明な経済状況、さらに日本国内市場の成熟や海外企業との競争の激化など、IT業界ならずともこれらの状況を打破するための新たな戦略が必要不可欠な状況となっている。

そこで新たに海外戦略を促進することで単なるリスク分散だけなく、国内市場に依存していては得られない人材や技術交流、国際的なビジネスネットワーク、さらには多様な視点から生み出されるアイデアやソリューションが企業全体の成長とより強固な収益基盤を構築することに繋がるだろう。

今回、カンボジア視察団の訪問先は、NTT Ltd.、Sunrise Japan Hospital、LASTMILE WORKS、JICA、JETRO、そしてJATIC。

いずれも有益な話ができた様子で、特にNTT Ltd.では同じIT業界ということもあってより専門的な話にまでおよび、Sunrise Japan HospitalではTDCソフト社のサービス提供の可能性にまで話が及んだ。

カンボジアの印象について尋ねると前出の手川部長は「カンボジアではみんなスマホを持っていることもあってお金も時間もかかる固定網よりも移動体網に注力して広がっていくんだろうなと思います。電波に困ることもなく仕事に支障もないのでサービス展開に関して困ることはなさそう。」としつつも「カンボジアの将来性は実感できたものの、オフショアとしてはまだかなという印象で、人材を抱えて育てていければあり得るが事業内容はしっかり選ばないと難しいと思う。」と慎重な姿勢を見せた。

もしいずれかの国に進出するとなった場合にどのような人材が選ばれるのかとの問いには「基本的には成功率を高めるメンバーが選出されると思います。そのためには動機ややる気の強さが重要ですし、ゴールに辿り着くまで粘り強くやってもらいたいと思います。肝を据えて泥臭くやらなければならないこともあると思いますので、そういったことに長けた人間が選ばれるのではないでしょうか。」と答えてくれた。

どの業界でも同じことが言えるかもしれないが、カンボジア進出に関して時期尚早という見方もできれば逆に今だからこそという見方と両方の見方ができる。だからこそ難しくもあり魅力的でもある。

いずれにしても手川部長が語った「ゴールまで粘り強く、肝を据えて泥臭くやらなければ」というのは海外で仕事をやっていく上では重要なことであり、すでに海外で仕事をしている我々も忘れてはならないことだろう。