//伝統工芸の国際共創モデルを構築

伝統工芸の国際共創モデルを構築

400年続く有田焼の伝統技術を今に伝える工芸メーカー、株式会社金龍釜(佐賀県武雄市、代表取締役・坂口佳世子)は、カンボジア市場での展開を進めている。有田焼の美と伝統と、カンボジアの文化と工芸技術との共鳴を図るもので、日本の工芸産業の新たな共創モデル構築となることが期待される。

金龍釜のこだわりは、職人の手作り、手描きでの仕上げに現れ、他社が再現困難な造形技術を確立してきた。有田焼の中でも球体作品や一枚焼きによる大型陶板など、特に難易度の高い作品の技術力に定評がある。金・銀・プラチナなどの高純度貴金属を使った絵付けは、美術館品質の輝きを放ち、国内外の顧客から高い評価を得てきた。また、グラデーション吹き付け技法など、伝統と革新を融合させた表現手法の開発にも取り組んでいる。

こうした独自技術は、仏壇仏具や住宅装飾、ホテルの調度品や美術陶板といった多様な用途に応用されている。また、地域文化との結びつきも深く、地元・黒髪神社への奉納品などでの実績も有する。

JATICは、カンボジアでの展示・販売拠点の設計・運営や代理店の開拓、物流・通関手配などを担う構えだ。さらに、カンボジアの木工職人と協業し、現地の高品質木材を活用した台座や額縁などの製作を検討しており、日本とカンボジアの工芸技術の融合と付加価値向上を目指す。

金龍釜は日本国内での製造と品質管理に集中し、特注対応や新商品開発を担う。文化的価値と経済的持続可能性を両立させるこの構想は、伝統技術と地域社会が連携し、新たな市場価値を創出する試みは、東南アジアに根を張る第一歩となるかもしれない。 カンボジアでの共創モデルは、有田焼の可能性を広げる挑戦として評価できる。しかし、それは国内に根差した職人文化の継承という難題の「出口」ではない。職人を志す若者が減るなかで、伝統工芸は“静かな消失”の危機に直面している。