//シアヌークビル 安心安全な街へ 

シアヌークビル 安心安全な街へ 

3月某日、私宛にある一件の連絡が入った。内容はシアヌークビルを取材してほしいという依頼で、シアヌークビルは昨今の特殊詐欺関連のニュースの舞台になったこともある所で、中華系カジノホテルが乱立することから治安の面から避ける人もいるが、世間で言われている印象とは異なる一面もあるので、ぜひ現地を見て、そのリアルな姿を伝えてほしいという依頼だった。
 さかのぼることおよそ6年前、まだ新型コロナウイルスが世界中に蔓延する前のシアヌークビルは中華系カジノホテルがどんどん増え、それに伴い中国人観光客も増えていた。そしてそれを嫌った欧米人らはカンポットの方へと流れていき、次第にシアヌークビルは中国かと思うほどに中華系の店で溢れ、地元の人たちの反感の声があがるほどだった。そしてほどなくして新型コロナウイルスが蔓延すると中国からの人も投資も途絶え(もちろん中国からだけではないが)建設途中のまま放置されたビル群が増えていった。コロナも収まり、誰もが開放感とこれからの期待感に包まれていた2023年に冒頭に述べた特殊詐欺の摘発があった。それによりシアヌークビルに行くことをためらうようになった日本人は多いだろう。
斯くいう私もその一人であり、今回のシアヌークビル取材は約3年半ぶりで2022年に開通した高速道路での移動も初めてだった。

 今回私がシアヌークビル行きに選んだバス会社はSakura Busという日系のバス会社で、バスという名前ではあるが実際には車はアルファードで、しかも予約するとテレグラムでメッセージが届き、指定した場所まで迎えに来てくれて$20(なぜか私の時は$18だった)とコスパが高く、しかもまだあまり知られてないのか他に乗客がおらず貸切状態だった。
途中1回だけサービスエリアで休憩をしつつ、約3時間でシアヌークビルに着くと3年半というブランクもあって自分がどこを走っているのか分からないほど様変わりしたエリアもあって驚かされた。

 まずは今回私を招待し、取材依頼をくれた日系カジノホテルのGrand La Vogue(以下GLV)に向かうとCS&MO(Chief Sales & Marketing Officer)の中沢さんが出迎えてくれた。
 中沢さんとは初対面で、お会いする前の事前情報では支配人の次に偉い人がご対応いただけるとのことで、カジノホテルの上層部なんてどんな人なんだろう…袖から刺青がチラリと見え隠れする強面の人か…いやいや今どきそんな分かりやすい人はいないだろうけどビーチリゾートのカジノホテルだから色黒で金色のアクセサリーなんか付けてるギラギラした人かも…と想像をどんどん膨らませていたが、実際に私の目の前に立っている人はごく普通の、いやむしろいささか温厚さを感じるくらいの人で良い意味で肩の力が抜けた。

早々に昼食を済ませさっそくホテル館内を案内していただくことに。まずは屋上に案内していただくと日本で30店舗以上を展開するシュラスコレストラン「ALEGRIA」が3月27日のオープンに向けて工事中であった。まだ工事中ではあったものの屋上という開放感の中、海風に当たりながら食べるシュラスコは、カンボジアにいながらにしてブラジル気分も味わえる。この屋上フロア全体は「SKY TOWN」と名付けられており、今後カンボジアでは定番となっているスカイバーなども順次オープン予定とのこと。

 次に案内していただいたのは客室。サウナやジャグジー付きの部屋やロフト(高さや広さはむしろメゾネット)やキッチン付きの部屋。泊まる部屋としてだけでなく住む部屋として見てもプノンペンの高級コンドミニアムと同じかそれ以上の部屋のクオリティには正直驚かされた。
 そして何より有難いのがルームサービスをテレグラムで注文できることである。英語やクメール語が苦手でもテレグラムであれば翻訳アプリを使いながらやり取りできるため、電話で注文するよりも楽に注文することもでき、やり取りがテキストとして残るため注文の取り間違いがおきづらい。
 ルームサービスは24時間注文可能というのも有り難く、ただ現状ではルームサービスのみが対象で、GFで販売しているカップラーメンなどの物販商品は部屋までのデリバリーには対応していないとのことだったため、今後はそれらもルームサービスで注文できるようお願いしておいた。

 次はなんと1978年創業の老舗ステーキハウス松波がテナントとしてGLVの8階に入っている。目で楽しむステーキと言われるほど目の前で繰り広げられる熟練のシェフの手捌きは圧巻で、目の前で焼かれるステーキの迫力は日本でもそうお目にかかれるものではない。さらにカンボジアで調達した鉄板では松波の味は出せないと鉄板をわざわざ日本から輸入するほどのこだわりようは期待値をさらに上げてくれる。
 日本人シェフが常駐しているため日本と変わらない味を楽しめるほか、個室も用意されており、それぞれの部屋でもちゃんと目の前の鉄板で焼いてくれるのでシアヌークビルで接待としても使える数少ないレストランの一つだろう。

 これだけで終わらないのがGLVの凄いところ。2階には東京で人気のBar Baronが入っている。入り口では「あれ?ホテルの中だよな?」と思うほど突然異空間に迷い込んだかのような錯覚に陥る格別な雰囲気を醸し出しており、店内も同様に落ち着いた大人の雰囲気で、ここがカンボジアだということを忘れてしまう。カクテルやウィスキー約500種類以上に加えてシガーも楽しめるようになっており、店内の雰囲気も相まって他では味わえない一杯を楽しむことができる。
 カンボジアで特にシアヌークビルではガヤガヤした雰囲気の店が多いが、そういった店が苦手な人や落ち着いた大人の雰囲気が好きな方にはうってつけのバーである。

 そして最後に1階のカジノエリアである。カジノエリアではスロットマシンエリアとカードゲームエリアの2箇所に分かれており、スロットマシンは現金で遊べるがカードゲームはチップと呼ばれるコインのような物に両替して遊ぶことになり、両替はいくらからでもできるがUS$のみで、最低賭け金はカードゲームであれば$10、スロットは¢1(ただし挿入は$1から)なので$100もあればそこそこ楽しめるだろう。
 カジノホテルと聞くとどうしてもカジノでプレイしたい人のためのホテルかのように思われるかもしれないが、カジノホテルとは思えないほど充実した施設の一つ一つは、どれをとってもそのためだけに行く価値のある施設ばかりである。

私のイメージしていたシアヌークビルではなかった

 ここまでホテルを中心に紹介してきたが、せっかくシアヌークビルに来たら街中やビーチにも行きたいし、離島にも行きたいものだが、やはり冒頭に述べた治安の面での不安に思う方も多いだろう。しかし私が見たシアヌークビルはもはや私の知っているシアヌークビルではなかった。コロナ前辺りはシアヌークビルの変わってしまった雰囲気を嫌い、旅行先や拠点をカンポットに移した欧米人が多かったように思うが、今は以前のように欧米人観光客がシアヌークビルに戻ってきており、さらには欧米人以外のあらゆる国の人々がシアヌークビルに集まっている印象だ。
 確かにまったく危険がないかというともちろん不用意な行動は控えるべきだし、危なそうな所に近づくべきではない。しかしそれはシアヌークビルに限ったことではなくプノンペンでもどこでも同じである。安くて美味しい日系レストランも増え、プノンペンではおなじみのジャパンショップまでできていることを知らない日本人は意外と多いのではないだろうか。
 今度のクメールニューイヤーにぜひシアヌークビル旅行を検討してみてはいかがだろうか。