//カンボジアが正しく発展していくためにできること

カンボジアが正しく発展していくためにできること

ファーストネーションズ株式会社
一般財団法人 日本先端技術国際インフラ協力機構
代表取締役/副代表理事
杉山 寿之(Sugiyama Toshiyuki)
神奈川県出身
1977年6月生まれ
趣味:スノーボード、合気道(2段)

まず簡単に経歴を教えていただけますか?
私はプロスノーボーダーを目指してカナダに留学していたんですが、運悪く怪我をしてしまいましてプロを断念しました。その後日本に帰国して、専門学校や就職も考えたのですが、そんな時に仲間の誘いで海水魚の人工ふ化と水産陸上養殖飼料を取り扱う事業を起業しました。その際、営業活動として日本全国の海岸線沿いを車で寝泊まりしながら一筆書きする形で4周回り、営業のいろはを学びました。その後、独学で化学や電気工学を学び、技術分野での経験を積みながら、LED照明ビジネスの世界に転向し、特に除菌ライトに特化した照明会社を設立しました。
現在は複数の会社を経営しながら、日本先端技術国際インフラ協力機構(JATIC)の副代表理事を務めています。技術とビジネスの両面から、社会に貢献することを目指しています。

ずいぶん幅広い分野の事業をされてきたんですね。
これまで幅広い分野に挑戦し、多くの失敗と成功を経験してきました。あえて難しい道を選んだり、ゼロから新しいものを生み出すことにやりがいを感じるタイプです。また、興味のある分野については徹底的に調べ、情報収集と分析には自信があります。得た情報を基に時代の流れを先読みし、新たな仕掛けを作るのが得意です。
一方で、一つのプロジェクトが軌道に乗ると、次の挑戦に気持ちが向かうことも多いですね。だからこそ、組織を大きくするよりも、少人数で柔軟に動ける体制を大切にしています。自由な発想で好きなことに挑戦し続ける——このスタイルを貫きながら、新しい価値を生み出すことにチャレンジしてきました。

初めてカンボジアに来たきっかけは何だったんでしょうか?
最初にカンボジアに来たのは、医療用の植物や菌類を育てる農業の可能性を調べるためでした。その時、カンボジアの若い世代のエネルギーと情熱に触れて、日本の戦後復興を思い出させるような感覚を覚えたんですよ。これがきっかけで、ここには大きな可能性があると感じましたね。

その時のカンボジアの印象はどうでしたか?
正直なところ、カンボジアはポルポト政権の影響で周辺国と比べると発展が遅れていると感じました。でも、今のカンボジアは若い世代が国を引っ張っていて、そのエネルギーと熱意が本当に力強いんです。彼らが掲げている『追いつけ追い越せ』という目標が、そのまま行動に表れていて、一生懸命努力している姿には感動しました。日本の戦後復興を思い出すような光景で、僕も何か役に立ちたいと思いましたね。
それから、カンボジア料理がとても好きです。タイ料理は甘さや辛さが強くて長くは食べ続けられないのですが、カンボジア料理はタイと日本の中間のような味付けで、毎日でも飽きずに食べられるのが魅力です。どの国も発展するにつれて、食事や服装など生活スタイルが欧米化していく傾向がありますが、カンボジアは大切なクメール文化をしっかり守っています。これこそ日本人が失ってしまった部分だと思うので、カンボジアにはこの素晴らしい文化をこれからも大切にしてほしいですね。

JATIC構想の発案者だそうですね。どういう思いで発案されたのですか?
日本は戦後、様々な課題を抱えながら発展してきましたが、その結果として社会構造の一部に歪みが生じている面もあります。例えば、農作物は一見丁寧に育てられていますが、農薬の使用量は世界一です。また、食品添加物の規制が緩いことで『添加物大国』と呼ばれる側面もあります。さらに、長寿国であるにもかかわらず、薬の消費量は世界で最も多く、がん患者数が増加の一途をたどっています。
また、人材派遣業が多く、商流がピンハネやペーパーマージンに依存しているため、仕事があっても給料が低く、貧困に苦しむ人々も少なくありません。このような現状を見て、『現代の日本人は本当に幸せなのか?』と考えることが多々あります。
ただ一方で、日本には素晴らしい技術力があります。特に中小企業が持つ技術には、新しい価値を生み出す可能性が大いに秘められています。しかし、これらの技術が大手企業の影響や規制、利権構造といった壁に阻まれて、十分に活用されていないのが現実です。
海外に目を向けると、特に発展途上国では、日本の技術に対する需要が非常に高いのが分かります。こうした技術を活かし、世界でのニーズに応える仕組みを作りたいという思いから、私はJATICを立ち上げました。JATICは、ただ日本の技術を輸出するだけでなく、それが現地の生活や産業にどのように貢献できるかを深く考え、実現していくための団体です。
カンボジアのような国々が、日本の良い面も悪い面も学びながら、独自の発展を遂げ、正しい方向に進むお手伝いができればと思っています。そして、いつかは日本を追い越していくような力強い成長を見せてほしいという願いを込めています。

JATICは他の団体とどう違うのでしょうか?
公的機関や支援団体はたくさんありますが、JATICは民間だからこその柔軟さと実務力が強みですね。特に中小企業の課題にしっかり寄り添って、具体的な海外進出の道筋をアドバイスしています。あと、『ここに加入して良かった』って思ってもらえるようなサービスをこれからもどんどん展開していきたいです。まだ始まったばかりなので、皆さんと一緒に成長していきたいですね。

ご自身でも会社を経営されていますが、どんな事業を展開されていますか?
僕の会社では、抗菌LED技術や、小分子活性水を提供する水処理技術、あとはウェルネス産業なんかも手がけています。これらの技術は、環境負荷を減らして持続可能な社会を実現することを目指しています。特にカンボジアでは、現地の課題に応じたソリューションを提供して、新しい価値を創造することを目標にしています。

カンボジアでは具体的にどんな事業を進める予定ですか?
まずはインフラ支援や水処理技術の導入、それからエネルギー分野での技術提供を計画しています。カンボジアが発展していくには、道路や物流の整備が欠かせないですし、沼地や川が多いので橋の建設も重要な課題ですね。あとは電力供給の問題。特にグリーン電力を推進するために、ゴミを原料にしたバイオマス発電所の建設に取り組みたいです。
さらに、水処理技術と農業の発展をセットで進めることも考えています。現地のニーズにしっかり応えながら、地域社会に新しい価値を提供していきたいですね。

ご自身の事業とJATICの活動、両立するのは大変ではありませんか?
正直、大変ですよ。でも、どっちも僕にとってはやりがいがある活動なんです。両方が補い合うことで、もっと大きな成果が出せると思っています。僕、都市伝説とか不思議な技術が大好きなんですよ。例えば、フリーエネルギーとか、封印された技術がいつか解放されるんじゃないかって信じてるんです。
そういう未来を想像しながら、会員企業が開発したアイデア製品を評価して、どうやって発展途上国や海外の需要に適応させるかを考えるのが楽しいのですよね。

どんな企業にJATICに参加してもらいたいですか?
JATICには、社会や環境に本気で向き合いたい、そんな熱い思いを持った会社にぜひ参加してほしいと思っています。ただ利益を追求するだけじゃなく、自分たちの技術や製品で現地の課題を解決したいとか、人々の生活をもっと良くしたいって考えている企業さんですね。そういう会社と一緒に、どうやったら現地でうまく活用できるか、現地に根付く仕組みを作れるかを、一緒に考えていきたいんです。『こんなアイデアあるけど、現地でどう活かせるかな?』とか、『こういうことやりたいんだけどサポートしてくれる?』っていう気軽な相談から始めてもらえたら嬉しいですね。私たちは、そうした志のある企業と協力し、具体的なプロジェクトを通じてその技術や製品をどう社会に適応させ、根付かせていくかを一緒に模索しています。

今後の目標を教えてください。
JATICを通じて、日本の中小企業が持つ素晴らしい技術を、発展途上国や海外で当たり前のインフラとして活用してもらうことが目標です。
あと、理想のカンボジアの未来像についてよく話すのですけど、例えば『モデルタウン』の建設ですね。それは、日本の最先端技術を活用して、完全無農薬の農業やオールグリーン電源でのエネルギー供給を実現する街です。ゴミを一切出さず、再利用を徹底した循環型社会を作りたい。教育も医療も、予防や健康増進に特化したものを取り入れます。緑と笑顔があふれる、助け合いの精神を持った街を作りたいのです。
こういう街をカンボジアに作ることで、『こういう社会っていいな』って思ってもらえるような目標になれたら嬉しいですね。それが僕が目指している未来の一つの形です。