カンボジア、持続可能な未来へ日本の技術を視察
11月24日、Mao Havannall民間航空大臣をはじめ9名の国務長官らが成田空港に降り立った。
今回のMao Havannall大臣らの来日の目的は、観光立国カンボジアの未来を見据えた空港インフラ技術の交流や、風力、太陽光、バイオマスによる発電など再生可能エネルギー技術の視察を行うことである。そして、持続可能な発展を実現するための新しいパートナーシップの構築が目指されている。
この視察は、2022年に当時の岸田首相とHun Sen首相の間で両国関係を包括的戦略パートナーシップに格上げすることに合意した流れを受けたもので、9名も擁する視察団の規模がその期待の高さを反映している。
カンボジアの経済発展を支える基盤として空港インフラの整備は最重要課題と言っても過言ではない。カンボジアでは、2025年にはタクマウ新空港の開港が予定されている。2030年には3000万人、2050年には5000万人の利用者を見込んでおり、この成長に対応するための準備が急務である。年間8000万人が利用する羽田空港の先進技術や効率的な運営モデル、さらには案内や接客における高いホスピタリティは、新空港発展にとって貴重な参考事例となり得る。この視察を通じ、両国の技術交流がカンボジアの観光産業の持続可能な成長に大きな寄与するだろう。
一方で、エネルギー分野においては、近年カンボジアの目覚ましい発展に伴い、電力需要の急増が深刻な課題として浮上している。過去10年間で国内の電力需要が約3.8倍と年々高まり、減少傾向にあった輸入電力が2019年からは再び拡大傾向に転じ、2023年には全体の21%を占めるまでになった。この状況は、経済安全保障上の観点においても、自国での発電比率の向上が喫緊の課題となっている。
さらに、世界的な脱炭素の流れを受け、カンボジア政府は2022年9月に再生可能エネルギーへの移行を含めた電力マスタープランを承認した。現状、主力となっている石炭火力発電の割合の引き下げを目指している。
これらの背景から、今回の大臣らの視察の期待と意気込みは自然な流れといえる。カンボジアは、シアヌークビル港のインフラ整備や、首都プノンペンとシアヌークビルを結ぶ高速道路プロジェクトなど、中国との協力を進めてきた。しかし、カンボジア政府はこれにとどまらず、各国と多角的なパートナーシップを模索している。日本の技術やサービスがカンボジアの持続可能な発展に寄与する余地は依然として大きい。
今回の大臣らの視察をアレンジした財団法人日本先端技術国際インフラ機構(以下、JATIC)の柏野代表理事は、「私たちJATICが、カンボジアの持続可能な発展に寄与するとともに、両国の包括的戦略パートナーシップの具体的な進展のきっかけとなることに、大きな意義を感じております。視察前の打ち合わせから、大臣と視察団の高い期待と熱意を強く感じており、責任の重さを痛感しております。視察はあくまでもスタートに過ぎません。今回のプロジェクトがしっかり実を結ぶよう、視察後も具体的な進展を全力でサポートしてまいります。」と述べ、今後の取組に意欲を示した。
さらに「今回の視察内容に入っていない分野でも、日本が海外で活かせる技術やサービス、製品はまだ数多く存在します。また、日本とカンボジア両国の橋渡しを目的とした企業や団体は多いものの、海外進出を自主的に目指す企業が中心です。しかし、これまで海外に目を向けていなかった企業の中には、自社で気づかない魅力や優位性を持つ技術やサービス、製品が埋もれている例は少なくありません。だからこそ、私たちJATICはそうした潜在力を持つ技術やサービス、製品を発掘し、それらが世界で輝ける支援を行いたいと考えています。」と述べ、日本国内での潜在的な技術力の掘り起こしにも意欲を示した。
今回弊紙では視察の全日程に同行し、カンボジア視察団が何に興味を持ち、何を評価し、日本の技術やサービスをどう感じたのかを探ることで、今後の両国のパートナーシップの構築・発展の参考になればと思う。