//人生の財産と呼べる時期

人生の財産と呼べる時期

 7年以上ぶりにメディア事業の携わることになり、取材ネタ探しという視点で改めてカンボジアを見てみるといろいろな意味で様変わりしたことを実感する。

 この7年の間には新型コロナウイルスの大流行もあり、それに起因した飲食店やさまざまな事業所などの入れ替わりによりカンボジアに住む人たちの様相も変わったように思う。特に日本人界隈はトクリュウと呼ばれる犯罪グループが増えたことも大きな特徴だが、同時に以前よりも優秀な人材がカンボジアに集まっている印象を受ける。

 以前は日本の社会に馴染めない者やカンボジアでしかやっていけないような言わば一癖あるような人が多かったように感じていたが、今では日本にいてもそれなりに出世してそうな人や将来有望な若者がカンボジアに来ているように思う。それだけカンボジアが魅力的な国になったのか、あるいは日本の魅力がなくなってしまったのか、いずれにしても将来有望な若者が早いうちから海外に出て経験を積むことは良いことだと思う。

 そして優秀な人材は日本人に限らない。今月からJATIC Media & Travelにも2人のカンボジア人スタッフと2人のインターン生が入社した。
 インターン生はまだ高校生ということもあって、右も左も分からずCVすらまともに書けなかったが、そんなことは知らなくて当然でさほど重要ではない。それよりも上司の話をしっかり聞く姿勢や指示されたことを一生懸命やる姿勢、分からないことはちゃんと先輩や上司に聞くなど本来教えるべき第一歩がすでに備わっている。
 そして何より驚いたのは私に話しかける時に必ず一礼してから話をするほど礼儀がしっかりしている。自分が高校生の時と比べても2人の方が圧倒的に優秀で、親御さんの教育がしっかりしていることが見て取れる。
 私はこのいわゆるZ世代と呼ばれる世代の日本人と仕事をしたことはないが、ここまでしっかりした若者はどれほどいるだろうか。
 これからいろんな経験することで将来カンボジアを支える人材へと成長してくれるだろうと確信している。
 2人の新入社員はいずれも30台半ばで日本での仕事の経験もあり、入社数日ですでに頼もしいスタッフに成長してくれそうな期待感を感じさせてくれている。
 1人は編集部所属で日本語はそこまで達者ではないものの地頭の良さでカバーしているし、英語はかなり堪能で真面目で向上心もあり、いろんなことを学びたいという意欲もある。さらに自分が学んだことを常に他のスタッフにも共有するなどチーム作りにおいてとても有難い存在になりつつあるので、独り立ちして取材に行く日もそう遠くはないだろう。
 もう1人は営業部所属で、私の少々雑な日本語でもしっかりコミュニケーションを取れるほど日本語が達者で、なにより営業マンにとって重要なコミュニケーション能力に長けている。これまでの努力が透けて見えるほど日本人と働くことに慣れており、私にとってここまでストレスなく一緒に仕事ができるカンボジア人は初めてかもしれない。お調子者なところはあるがそれが武器になるようにウジウジ考えずにノリでドンドンぶつかっていけば優秀な営業マンになってくれるだろう。

 人生の中の30台という大事な時期を預かる者として、教育は単なる業務上必要なことではなく、その人の今後の人生を左右する大きなことだと捉えるようにしており、一緒に働いた期間がその人の人生にとって転機となるものにしたいと思っている。

実際に自分にとってもそういう人がいて、その人と働いた期間が今の自分の礎となっていると実感することがあるからで、それは仕事の範疇を超え、価値観や生き方にまで影響している。当時から20年以上経ち、今の時代にそぐわないこともあるのでアップデートしなければならないこともあるが、多くのことは普遍的であり世界中で通用するものだと思っている。

今後どれだけ私と時間を共に過ごすか分からないが、数年後か数十年後かに「あの時JATICで働いた期間は財産だな」と思い返してもらえるように、1人ずつ本気で向き合っていこう。