//成功の鍵は好奇心

成功の鍵は好奇心

一般社団法人国際労働法務協会
中江大樹
1990年11月生まれ
滋賀県出身
趣味:旅行、写真、キャンプ

まず中江さんの経歴を簡単に教えていただけますでしょうか?
僕はもともと京都の大学に通っていたんですけど、大学行きながらボランティア活動をしていて、それで2009年に初めてカンボジアに行ったんですけど。向井理の主演の「僕たちは世界を変えることができない。」という映画のモデルになったNGO団体が東京にあって、京都にその姉妹団体があるんですけど、その団体の代表をしていたんです。
東京の方の団体は学校を作ったりとかいわゆるハードの方の支援をしていて、僕ら京都の方は感染症の多い地域で手洗いの指導をしたりとか衛生系の教育プログラム作ったりとかコミュニティ開発したりとかそういうことをさせてもらっていました。
僕は大学生やったんで、大学で勉強しつつカンボジアを行ったり来たりをしていて、そんな中でカンボジアはやっぱりええとこやなぁ。ここでしばらく暮らしたいなと思うようになりまして、卒業してすぐカンボジアに行きましていろいろやったんですよ。服作ったりとか、なんかいろいろやったんですけど、そんなんしている中でほぼ新卒の時にちょっとうちで働いてみひんかと声かけてもらったのがサラヤやったんですよ。
でサラヤでちょうどイオンモールができた時なんで2014年の時ですね。その時にサラヤ、もうほとんどイオンの中ですけど、そこで仕事していまして、その後2年くらい働いて日本に帰ってきて、すぐに今の人材のところで働くようになったみたいな感じですね。
ちょうどそのタイミングで結婚するかどうかって話とかもあったんで、これを機に一回日本変えるかってなって日本に帰って今の人材業をするに至っていますね。

その人材業っていうのが国際労働法務協会になるわけですか?
国際労働法務協会の前身になる公益財団法人にいたんですけど、技能実習の職業紹介とか就労支援っていうのは公益法人でしかできないんですよ。最近の法律改正で公益法人で特定技能外国人も扱えるようになったんですけど、以前は技能実習生はあくまでも日本に勉強しに来ている人なんで、その支援をするのは公益事業なんですけど、特定技能外国人は労働者なんで、この就労支援は営利事業になるんですよ。技能実習と特定技能で営利事業と非営利事業とで違うんですね。今はもう技能実習生よりも特定技能外国人の方が増えているんで特定技能外国人を扱う営利事業の売上が多くなっちゃって公益認定外れてしまう問題が起きているんです。そのままでは公益法人でいられなくなるっていうので特定技能事業を外に出さなあかんなっていうのがありまして、僕は外の団体に出たっていうところですね。公益財団ではちょっと仕事しづらかったっていうのもあって、自由にやらせてくださいということで、僕がいたところの元上司と僕とで半ば独立してやっていきましょう。ってことでそれが国際労働法務協会になります。

国際労働法務協会という名前だけ聞くと、ずいぶん難しそうなお仕事されてそうな印象なんですけど、具体的にはどういう活動内容なんでしょうか?
主に特定技能外国人の就労支援と、あとは特定技能外国人を受け入れている企業さんの労務管理支援です。
日本人が日本で働いているだけやったら基本的にはもう労働法だけ気にしてればいいと思ですけども、外国人の場合は技能実習でしたら技能実習法とか、外国人の人はみんな入管法の枠の中で仕事をしてはるんで、そこの法に抵触しない枠でちゃんとこう安心して仕事してもらえるようにっていうのの法務支援ですかね。ていうのをさせてもらってますね。

やはり外国人が増えてる中で、受け入れ側と外国人側のお互いの理解度っていうのは深まっているんでしょうか?
まあ徐々に深まっているとは思いますけど、そんなにお互い理解しているとは言えない状態だと思います。
異文化理解的な側面ももちろんそうですけど、それよりもうちの業務に関連して言うと、例えば外国人の人って在留資格、在留カードを持って日本に在留されてるいるんですけど、例えば留学生の人のアルバイトやったら、週に何時間までしか働いたらあきませんよとかいうのが労働法では決まってないんですけど、入管法で決まっているんですね。もちろん労働法では自由に何でも職業選択の自由は保証されてますけど。入管法ではそうではなく制限があったりするんですけど、日本の中小企業の方ってそんなことやっぱ知らないんで、うちにアルバイトに来てくれと、日本人の学生を採るのと同じように外国人を入れて、君なかなか仕事うまいね。じゃあ今度こっちもやるかとか言ってやってたら、知らず知らずのうちに外国人が従事したらあかん仕事についてたとか、制限時間をオーバーしてたとか、そういう管理違反というのがめちゃくちゃ多いんですよ。入管もだんだん厳しくなってきてるんで、本当に悪質な違反というよりかは、うっかりミスみたいなので在留資格が取り消しとかなってしまったらもうほんまに元も子もないんで、そんなんにならへんようにしっかりとうちが監査しますよ。というのをさせてもらってるレベルです。

こういう業界で外国人が増えてるとかっていうのはありますか?
今一番多いのは製造業ですかね。製造業っていうと工場なんですけど、金属系を扱うとことか、プラスチックもあれば、飲食料品の製造業も含まれるんで、製造機械系の製造と飲食料品とどっちも製造業って一括りにされるんで間口が広いっていうので来られる方増えてますね。宿泊とか外食とかもいるのはいるけども、そんなに多くはないかな。建設分野はずっと多いですね。

そうすると製造業の方には失礼な話になるかもしれないですけど、単純労働的なところが多くなる感じなんでしょうか?
はい。そう思います。
それは実際、特定技能の方にもやっぱりその程度が一番いいだろうっていう感じなんですかね。特定技能の外国人に求められる程度かなって思いますね。まあその中で仕事を覚えるのが早いとか上手いっていう人は特定技能の中でも特定技能一号から二号にステップアップしたりで、そこからだんだん永住なんかを視野に入れて、正社員と同じような待遇で、だんだん管理職とかも主任クラスとかにキャリアとしていく人も中にはちらほら出てきているので、そういう意味では単純作業だけっていうふうな環境とはちょっと色は違ってきてるかなと思いますね。特に特定技能二号に移行しようと思うと管理者経験とか、指導経験が要件として求められるんですよ。なのでそんな部下というか後輩何人か持って仕事を振ったりとか、ある意味小さいですけど、マネージメント能力とかも問われるようになってきています。

それは外国人の労働者に対してなのか、日本人も含めて管理する立場になるのかというとどちらなんでしょうか?
今は外国人だけですけど。ただ、徐々に外国人がリーダーになっていって、日本人に指導するっていうことも想定はしていると思われます。やっぱりその20代後半とか30代とかの外国人の人が新卒の日本人教えるっていうことも十分あり得る現場にはなってきているので、その辺はもうグローバルにリーダーとして育成みたいな視座には入ってると思いますね。

教わる日本人側も上司が外国人ということもあり得ると想定してないといけないですよね。
そうですね。そうなった時にはもう日本に何年もいらっしゃるんで、日本語でやり取りとかできたりしますけど、やっぱり文化の違いというか、価値観の違いというのはどうしても出てくるんで、そこでどうしても合う合わんという問題は出てくるかなと思いますけど。でも多分日本の中小企業はそうも言ってられへんぐらい。うちは外国人は入れへんわとかそんなん言ってられへんちゃうかなと思いますね。もう生き残り戦略やと思いますね。この外国人採用っていうのは。それぐらい人手不足っていうこと。もうめちゃくちゃ人手不足ですね。日本中どこ行っても。

そうすると人手不足が慢性的な会社って採用に対してそもそもふるいにかける余裕すらなかったりするじゃないですか。外国人に限らず来たらとりあえず採用っていうことになってくるとトラブルも必然的に増えてくるのではないでしょうか?
はい、ありますね。外国人日本人と問わずっていうことですよね。本当に十数年前とか二十数年前までは普通に人を雇えてた会社でもだんだん高齢化とかで人が雇えへんとなってくると、今まで取ってなかった人材取るようになっていくんですよね。例えば今までは大卒とかを要件にしてたところが、もう高卒でも中卒でもそう言うてらへんから入れようとか。茶髪の子は今まで取らんかったけども、茶髪でもいいやろうとか。ピアスももうそんなもん見た目はおいてとか。それをしているとだんだん今までになかったちょっとやんちゃな子が入ってきたりとか、もちろんそういう問題は絶対出てくると思います。外国人っていうのはその最たるものなのかなって思いますね。
日本人というだけで全員が同じ価値観持ってるわけじゃないですけど、外国人が入ってきたら考え方が全然違うわけじゃないですか。そういう意味では組織文化みたいなのはすごいダイナミックに変わりますし、でもそれに適用していかなあかんのやろうなって思いますよ。どうしても嫌なら別に外国人を取らへんかったらいいだけと思うんですけど。でも関わっていかなあかんなとなって、そこでトラブルになることもあれば、逆にいいイノベーションを生むことも当然ありますし、そこをどういうふうに採用させていくのか、ただの人手不足解消の手段じゃなくて。本当にイノベーションの源泉としていかに育てていくかみたいなのが肝になってくるなというのを常々思いますね。

外国人労働者だからこその問題というのはどういうのがあるんでしょうか?
ミスマッチが起こるのは外国人も日本人も同じだと思ですけど、日本人の場合ってすぐ辞められるじゃないですか。会社に入って、やっぱこの会社合わへんな、辞めようっていってすぐ辞められるけど、外国人の場合、辞められると言うても実際には職業の分野の幅とかがすごい狭かったりとかして、日本のこの社会構造の中で自力で転職先を見つけてきて、転職決めてで在留資格変更してって基本できないんですよ。だから端的に言うと転職できない。特定技能という法律制度の中では転職は自由にできますよ。とは言ってますけど、実際できないんで。そうなったらミスマッチが起こってもミスマッチのまま労使関係をずっと続けていかなあかんということで、不健全な現場になってしまうっていうのは結構外国人特有の問題かなと思いますね。日本人やったらもう辞めますわって言ったところで別に法的に問題ないですけど、だからこそ、その企業側も外国人さん本人も慎重に採用するかどうかとか自分のキャリアパスどうするんだとかその辺はやっぱりカンボジア人がカンボジアで働く以上に日本人が日本で働く以上に外国人を雇うとか外国で働くってなった時に、よりそこを細かに設計してかなあかんなっていう問題は出てきます。

そういった問題は結局、法整備が追いついてないってことなんでしょうか?
いや、もう法律は多分これ以上はあんまり自由にならへんと思いますよ。そこを解禁してしまうと言葉悪いんですけど変な外国人も来てしまうので。逆に日本人が例えばアメリカで働くとなった時にも同じようにやっぱビザの要件っていうのは結構厳しいんですよ。建設の関係で行ったのにコックになりますとかって基本的にはできないんで。一定の縛りっていうのは作っとくべきかなと思ですけど。そこを運用していく現場の会社の人も知らないし。そこで働く外国人自身も知らないっていうのが問題だなと思いますね。

それでは、こういう人は日本で働くには向いてないから来ない方がいいよ。みたいなタイプや傾向はありますか?
ありますね。日本に適用しにくいかなと思う人は、チャレンジ精神というか好奇心みたいなのがない人っていうのがやっぱり一定数いるんですけど、特に僕の肌感覚ではカンボジア人に結構多いなぁと最近思ってるんですけど。一人で何もできないんですよ。全然好奇心もないし、外に出ないし自立してないんで、例えば一人でバス乗れませんとか電車乗れませんとか。病院にも行けません。市役所にも行けません。みたいな。ほんまに緊急事態で病院行かなあかんとかなったら、それは我々みたいな支援者が一緒に付き添ったりするんですけど。とはいえ、会社の一員として、もっと言えば地域の一員として生活する以上、最低限の公共交通機関を乗ったりとか、買い物したりぐらいは一人でせなあかんと思ですけど。もうそれすらできないとかやる気がない人っていうのが一定数いるんで、そこをチャレンジしようというふうに思えない人は日本に、というかあんまり海外に行くべきではないなっていうのは思いますね。特定技能みたいに五年とか三年とか、十年とか長いスパンで働こうと考えるんだったら、お金稼ごうだけじゃなくて、社会とか地域の一員として暮らせるようになるぐらいの行動っていうのはやっぱり自発的に起こしていかな絶対ダメなんで、そこをやろうっていう気持ちがないと、人に迷惑かけちゃうだけかなっていうのがありますね。実際やっぱそういう人が中にちらほらいるんですけど、我々もサポートはするんですけど、会社の人からしたらカンボジアの方はすごい手間かかるなとか、あれしてこれしてって言ってるのすごいわがままやなとか、カンボジア人のイメージがすごく悪くなっちゃうんで、だから自分がずっと人に甘えてたらカンボジア人のイメージ悪くなっちゃうんやでっていうのを僕らも言うんですけど、でも別にへーみたいな子もいますし。それはどうかなと思いますね。

カンボジア人で何でもあれやってこれやってみたいなことを言ってる印象はないですが、日本に行くとそうなるんでしょうか?
日本にいたらそうなるのかなと思いますね。特にカンボジア人というのは人にお願いごとするのとか、もっと言えばちょっとしたお金の貸し借りとかも人に迷惑がかかってるっていう自覚がない、困ってるんだったら助けてあげて当然じゃん。みたいなことが多いんかなと思うんですけど、日本でそれをやるとやっぱり良くないなと。お金の貸し借りも特にそうですけど、その価値観のまま日本に来ちゃう人もいるんで、やっぱ海外で働くんやったらそれなりの自覚を持たなあかんなと思いますけどね。
いや、ほんまに。これちょっとインタビューから話ずれるかもわかんないですけど、最近結構意味不明なトラブルよくあって、ちょうど先週4月の3日かちょうど一週間ぐらい前に来た子がカンボジア人の女の子でいたんですけど、もう現金一円も持たんと来たんですよ。1リエルも持たずに来たんですよ。理解できないでしょ。多分プノンペンでは普通に空港まで家族が送ってくれたりしたんやと思ですけど、空港着いて僕も車で迎えに行ったんですよ。で空港から神戸の会社なんで神戸まで送って、市役所で住民登録して、社会保険とかの加入に住民票を持っとかなダメなんで住民票取って窓口で300円と言われて。300円ある?って聞いたら無いですと。大きいのしかないんかなと思って、とりあえずお金出してって言ったらお金無いです。財布も無いです。ほんまに何も無いです。よく来たな。それでみたいな。意味わからん。ドルもリエルも円も何も無いんですよ。財布という概念がないんですよ。よくそれで海外来たなと。で君、明日から仕事するけど仕事始めてお給料日は当然一ヶ月後じゃないですか。一ヶ月どうすんの?みたいな。いや、何も考えてませんでした。みたいなのがここ三回続いてるんですよ。そんなケースが。
一ヶ月前の子は同じく仕事始めて給料日が一ヶ月後やったんですけど、2000円しか持ってこなかったんですよ。一ヶ月どうやってそれでご飯食べるの?とか言ってもああとか言って。社員寮入るんで、家具と家電ぐらいはあるよ。でも例えば掃除道具のスポンジとか、タオルとか、お米とか買わなあかんやん。どうすんの?と聞いてもポカーンとしてて。いや、プノンペンからシアヌークビルに旅行に行く子でも20ドルしかないことないじゃないですか。もうちょっと持ってるじゃないですか。なんでそれで日本に来たんみたいなケースが最近めっちゃ続いてて。なんかねぇ。後先考えてないなぁみたいな。
それが特定機能なんですよ。かつて日本で三年間働いた経験があって、カンボジアに帰った人がまた日本にカンバックしてきているケース。ある程度日本のこととか分かってるはずなんですけど。それでも日本で社員寮に入って、じゃあ明日から頑張ってね。バイバイっていうタイミングがあって、あ、やばい。お米買わなきゃ。お金がないって、そこで気づくんですよ。意味わからんでしょ。で会社の人に結局お金借りなあかんとか給料前借りせなあかんとかになるんですけど。その前のケースは僕個人的にちょっとお金貸したりとかしましたけど、でも会社の人からしても、なんで生活費すら持ってきてないのってなるじゃないですか。中江さんなんでその辺指導してくださらなかったんですか?とか言われても僕も想定外すぎて。ああ。みたいな。意味不明なトラブルというか?もう予測不可能な。その思考回路持ってはるんで。カンボジア行ったらまあ予測不可能なトラブルってあるじゃないですか。なんでそうなんの?みたいな。
カンボジア人。よってWhy?カンボジア人ってなる。予測不可能なやつがさすがに日本でされたら笑えへんというか。カンボジア人耐性ない社長の前でそれせんどいてほしいなって思ですけど、防ぎようがないんですけどね。
だからそれを日本側の受け入れ企業の人事の人とかに一応再発防止じゃないですけど、なんでこんなことが起こったのかとかいうのもなんかそれっぽく屁理屈になるんですけど説明はするんですけど。例えば、その異文化理解っていうものをやっていく中で、スケールになる尺度っていくつかあって、例えば日本ってすごい長期的視点を持っている人種だと言われてるんですけど、カンボジアって超短期的視点なんですよ。十年後のキャリアはどうとか、老後の不安は何とかそんな話ってカンボジア人はしないじゃないですか。今が楽しければいいな。まあ刹那的な生き方といえばそこまでなんですけど。だからあんまり長期のことを考えていない国民性であるとか。あとは人に迷惑をかけることを別に迷惑とも思っていない。お金なかったら借りたらいいじゃんっていうのをカンボジン同士のコミュニティではそういうふうに回ってるんで。お金借りることも別にそんなに悪いことではないと思っているとか。なんかもっともらしい理由がいくつか出せるんですけど。とはいえ、ほんまにそんな財布すら持たずに海外に行く発想って僕もあんまりよくわかんないですし。でもある時、カンボジア人とか日本人とかベトナム人とか中国人とかがいっぱいいる前でこういうトピックを喋ったことがあるんですけど、50年前の日本もそうじゃない?ってある人が言ったんですよ。日本に住んで20年ぐらいの外国人の人なんですけど。それって50年前の日本でもそうだよねって。例えば九州から片道切符だけ持って大阪とか東京に出稼ぎに来てた人、お金なくてもとりあえず着の身着のまま東京に行ってここで働かせてくださいと門戸を叩くみたいなそういうことだったんじゃない?とか言われて、あー確かにそうだね。そう言われたらそういう人もいたかもしれへんね。という話をしたんですけど、それぐらい我々のイメージを比較させて広げていかないと自分ごとに腹落ちさせられないような予測不可能な、カルチャーショックみたいなんが頻発しますね。

逆に今おっしゃられたようなことの反対の人っていうふうになってしまうかもしれないんですけれども、こういう人は向いてるなというタイプや傾向はありますか?
今言うたのと逆で、好奇心とかチャレンジ精神。何でもいろんなことやってみたい。体験してみたいとか、いろんなこと挑戦してみたいと思う人はやっぱりどんどん来てほしいなって向いてるだろうなって思いますね。結構自発的にあれしたい、これしたいって思える人。好奇心強いっていうのもなんでかっていうと仕事するときに、やっぱこう初めて覚えることをなんでこの仕事をするんだろう。なんでこの作業をせんとあかんねんっていう、どうしてどうしてっていうのを自分で追求しようって思える人ってやっぱ飲み込みすごい早いんで。例えば僕の取引先で養鶏場がいくつかあるんですよ。カンボジアで養鶏やってる人って多いじゃないですか?田舎で鶏飼ってますとかが結構人気なんで、カンボジア人の女の子がよく来てくれはるんですけど、日本の養鶏場ってすごい細かい。もう餌もでかいケースなのにグラム単位で管理してたりとかするんですけど、言われた通りにやるだけじゃなくて、え?なんでこの餌は何グラムなんですか?ってこれどういうふうに出してるんですか?とかすごい興味持って聞いてくれる子の方がやっぱ伸びがいいのと、カンボジアに帰った後も絶対そのスキル使えるようになるんで。探求心がある人ほど会社からも重宝されるし、仕事も実践能力もすごい高いですし、キャリアパスが見えやすいかなって思います。

日本における日本人にとっての外国人と、カンボジアにおけるカンボジア人にとっての外国人、それらの理解不足ですとかコミュニケーションミスというのは何か共通点みたいなものってあるんでしょうか?
そうですね。どこでも起こり得ると思います。条件は同じだと思うんですけど、日本人がカンボジアで仕事をするとなる時って、日本人側が適応努力はするじゃないですか。適応努力するべきだっていうべき論もあるんですけど、そうでなくてもやっぱせんのやったら一定数の顧客は取れない、採用もできないっていうのがあるんである程度の適用はするじゃないですか。日本にいる日本の従来の日本の会社は、外国人材に多少の寄り添いは見せても適用努力までは多分しないと思うんですよ。極端に言えば、日本人がプノンペンでラーメン屋でもやりましょうと店を出して、そこで採用するスタッフに初日からお前ら日本語喋れとは言わへんと思うんですけど。でも同じ条件で技能実習生でも初めて日本に来ました。っていう子に対しても、日本企業の担当者は本当に無意識というか悪気なくなんで日本語もできないの?って言っちゃうと思うんですよ。適用してくれるものだって、やっぱ思い込んでるっていう傾向がすごい強いと思うんですね。だから郷に入っては郷に従えみたいなところがすごい強いんで、特に日本の人って。そういう意味ではカンボジアの中での日系企業の経営者とスタッフやったら多少のお互いの引力があると思うんですけど、日本ではなかなかそれが作用しないっていう違いがあるかなと思いますね。

外国人労働者に日本に働きに来る前に知っておいてほしいこと。逆に日本企業側に外国人を雇用する前に知っておいてほしいこと、それぞれ何かありますか?
外国人を雇用する日本企業でいくと、具体的なところになるんですけど、「やさしい日本語」って聞いたことあります?「やさしい日本語」っていう言語があるんですよ。言語って今あえて言ったのは「やさしい日本語」ってネットとかで調べてもらったら多分いっぱい出てくるんですけど、優しいが漢字じゃなくてひらがななんですけど「やさしい日本語」。すごい噛み砕いた小学一年生でも理解できる日本語なんですよ。で、例えば最近自治体なんかでも大阪市とか福岡も自治体のホームページ開いたらパソコンの画面の上の方に言語を選ぶとこあるじゃないですか。英語とか中国語とかその中にやさしい日本語っていうのが加わってたりするんですけど。外国人でもわかるすごいやさしい日本語なんですけど追加して。「やさしい日本語」辞書とかも出てたりするんですけどね。その「やさしい日本語」を喋るのってすごいテクニックとか手間とか時間とかかかるんです。でもぜひ外国人を雇う企業にはこれを知ってほしいというのは、結構いろんなところで言っていまして。例えば日本の企業でこれから外国人を雇うぞとなった時に、社内の掲示物とか就業規則とか雇用契約書とか、それを全部英語とかクメール語に翻訳するのって手間と金かかると思ですけど、「やさしい日本語」を導入すればコストゼロで外国人にもわかる書面ができるんですよ。
「やさしい日本語」これをぜひ知っておいてほしいなっていうところがまあ一点と、異文化圏から人が来るんで、いろんな問題っていうのは顕在化してくると思うんですけど、外国人採用によってそれまで当たり前ってされてたものが当たり前じゃなくなったりとか、そこに疑問を持つ人が加わるんで当然やと思うんですけど、組織文化が変わるっていうことをわかった上で、変われることと変われへんことっていうのをしっかりと区別しておいてほしいなっていうのがあります。自社のこのルールは変えてもいい。でもこのルールは絶対に変えちゃダメだみたいな指針をしっかりとしておくっていうのは、やっぱり日本の企業さんにお願いしたいことかなと僕は思いますね。

カンボジアに初進出しようと思う外国企業にも当てはまるかもしれないですね。
そうですね。まさにそうですね。
海外進出する企業やったら絶対にカンボジア支社とかカンボジアチームみたいなの文化って新しく醸成されるものだと分かってきはると思いますけど、外国人の人が入るだけで文化ってだいぶ変わりますからね。下手したら共通言語変わったりとかするわけじゃないですか。

逆に外国人労働者側に知っておいてほしいことってなにかありますか?
これもすごいミクロなとこなんですけど、ほんまに当たり前のことなんですけど、これから日本に働きに来るよって言だったら、まずその会社のこととか、その地域のこととか、もっと言ったら業界のこととかグーグルレベルでもいいから知っておいてほしい。調べておいてほしい。日本に来てからも興味を持てるように下準備をしておいて欲しいっていうのを思いますね。なんか日本で三年とか五年働いてましたっていう人にカンボジアで逆に会った時に、例えば福岡県で働いてましたという人に、福岡でどんなところ行った?とかどんなものが有名?どんなものが美味しい?って聞いても何も知らんみたいな人が結構いたりするんですよ。めちゃくちゃもったいないなーみたいなこと思う。下手したら会社の名前すら知らないとかも結構いたりするんで、そこはもっと関心持ってほしい。関心持たずに働いた五年と関心持って働いた五年って絶対実りが違うって明らかじゃないですか。だから、もうそこを事前にやっぱ興味を持てるように準備をしておいてほしい。
うちの取引先だったらそうめんメーカーさんとか多いんですよ。兵庫県の「揖保の糸」とか分かりますかね?これが何なのかを知らずに三年間働くんじゃなくて日本のトップシェアの「揖保の糸」っていうそうめんのブランドとか、それを分かった上で作る方が絶対モチベーションというかそんなのも違うと思うんですよ。だから、会社のこととか、地域のこととか、商品とか業界のこととかを最低限でもいいからまず0から1だけでもいいから知ってから日本に来たらより実りが多いっていうのはぜひ意識してほしいなって思いますね。
あと、日本語学習ももちろんですね。会社の人とか地域の人のためじゃなくて、やっぱ最終的には日本語学習って自分のためになるもんなんで習慣づけてほしいなって。その大事さはわかっておいてほしいなと思います。
だからなんでこれは通じてなんでこれ通じないのかな?とかその辺も興味持ったらまだ勉強の仕方も変わったりするじゃない。

なるほど。先ほどお聞きした「向いてないな」っていうところに通じる部分なんですね。
あえてこの話を発展させるとカンボジア人とか外国人材を受け入れてうまく回せてる企業であれば、組織風土を強みにして、海外出店もできる企業っていう一つのスケールになると思うんですよ。だから技能実習制度って大義名分としては、人材を育てて国に送り戻すっていうことだったと思ですけど、そこで現地の育成プログラム組んでカンボジアに出店しようかなんて話も今こそ持っておくべきだと思いますし。逆に外国人を入れて、やっぱりうまくいかんかったと我が社では彼らは扱えんというのであれば、海外に向いてないねっていうのが組織面では浮き彫りになってくるのかなと思うんで。トラブったらダメだじゃなくて、一つのそういうのを可視化するためのツールとしてこの制度を使うってのもありかなって思うんですけどね。

最後になるんですが、外国人労働者でこういう成功事例もあるんですというような、象徴的なモデルケースがあったら教えていただけますか?
インドネシア人は帰ってすぐ創業する人多いんですよ。大きい会社の社長になってる人なんかが結構いますね。例えば、日本の小さい中小企業で初めて電子機器触りましたみたいな人だったんですけど、インドネシアのジャカルタのちょっと郊外の方に帰って、創業して、もう地元では大きな企業の経営者されてますとか。あるいは自分で技能実習生を経験したからこそ送り出し機関を自分で作って成功してる人もいますし。結構そういう例は多いですね。カンボジア人でいくとさっきの養鶏上の話なんですけど、まだ今日本に来て三年ちょっとの人がいて、もうすぐカンボジアに帰って養鶏場を自分でオープンしようかなっていうプランニング中ですね。その子はまだカンボジアには戻ってないんですけど、日本の養鶏手法を学ぼうとして日本に来たんですけど、それ以上に、畜産を扱うんで、養鶏の技術よりも衛生管理を学ぶことの大切さに気づきましたって言ってて、そういう視座が持てたのが一つすごく成長してくれてるなと思うのと、あとは畜産周りの技術が手についても、経営に関してはやっぱりど素人じゃないですか。今簡単な貸し方、借り方みたいな経営の入り口みたいなところを自ら勉強しようとしてるんで、人格的に成長されてるんで。帰って成功してほしいなと思ってるんですけど、そういう気づきを得てるっていうのは、現時点ではいいモデルだなと思ってるんですけど。
学んだことをそのまま直結させてるのだけが成功ではないと思うんですよ。技能実習制度ってそういう制度なんですけど、日本で建築を勉強してベトナムに帰って建築やってくださいみたいな。でも日本人でも法学部出た人間が全て弁護士になるわけじゃないじゃないですか。ただ、それをそのままやることだけが成功ではないと思うんですけど。日本に来て、日本が好きになってくれて、技能実習で仕事しながらもずっと自分でテキスト買ってきてN3取ったり、N2取ったりとかして。で、技能実習の期間終わって帰って何しようかっていう時に自分に残ったものは仕事の技術もそうだけど、日本語がすごく上達したというのが武器だってことに気づいて、今日本語の先生やってます。

そういう成功事例として挙げられる人たちは、やっぱり関心、好奇心、チャレンジ精神があったから成功したということなんでしょうか?
そうですね。図らずに喋ってましたけど、確かにそうですね。直結してると思いますね。あんまりそこに関心持たずに漫然と言ったらすごい言葉悪いですけど、与えられた仕事のみを淡々とこなしている人は多分中途半端に貯金はできると思いますけど、帰っても結局目的意識なくその貯めた百万程度のお金をすぐに浪費して元の生活に戻っているみたいなパターンになると思うんですよ。だからちゃんと目的意識持って日本にいてくれた人の成果なのかなって思いますね。
京都でずっとスーパーの精肉加工場で働いてくれてた女の子がいて、先月か先々月仕事終わってカンボジア帰ったんですよ。その子も日本語がすごい上手で、でも親の介護があるからって帰ったんですけど、日本人と一緒に働きたいからどっか紹介してって言ってて、大橋さん紹介して。大橋さんのとこで多分今月から仕事スタートしてますね。っていう例もあります。それ成功モデルに育ててあげて欲しいなと。
カンボジアに帰っても日本人との接点をずっと持ち続けたいって言ってくれるのってすごく嬉しいんですよ。なんかもう日本のことを知りません。さよならじゃなくて、ずっとこうやって関係を保とうとしてくれる姿勢ってすごい嬉しいし。